上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.--
(twitterに加補筆)

岩井俊二企画・脚本のドラマ『なぞの転校生』を毎週楽しみに見ている。

最初、変態ハゲの着替え盗撮シーンから始まってどうなることかと思ったが、回を追うごとにどんどん面白くなっていく。

今週第9話の冴木のセリフがいい。

「僕に手足をもがれた虫は、言葉を喋れたら僕に”ありがとう”と呼びかけるかもしれないじゃないか」

転校生=山沢典夫をためらいなく屋上から突き落とすような異常人格者の冴木だが、
彼は家庭に問題を抱えた小学二年生の頃、すでに虫の足を好んでもぐような子供だった。
だが担任の三枝愛子先生は、彼を優しい子だと言い、
家庭訪問した際、彼の両親のこともまた優しい親だったと、クラスのみんなの前で言った。

しかし実際の冴木家は、父親が母親に暴力をふるう壊れた家庭だったのだが、担任の先生にはそのことは見えなかった。

この歪んだトラウマ体験から冴木は大事な気付きを得る。

「三枝愛子先生は身をもって僕にあることを教えてくれた。世界は自分で決めればいい。自分が思い込んだ世界こそが自分の世界であって、他人に決めさせるものではないんだ」

冴木は、自分とその家庭を手前勝手な思いこみで理解の中に収めようとした三枝先生の傲慢を正しいと評し、凶悪な性根を隠さずありのままの自分を生きることを選んだ。
その姿勢のみにおいては、彼の考え方は公平で筋が通っているといえるものだ。



その冴木の人格を強制洗脳で友愛的に改変したのが、なぞの転校生─山沢典夫のモノリスで、
このテクノロジーは明らかに人道的に狂った使われ方をしているのだが、彼ら異世界人はそれに依存しすぎて、おかしいという感覚すらない。
それゆえ彼らの世界はモノリスのために滅んだらしい。

異常人格者から「人格者」へと強制的に性格を変えられた冴木が、転校生のモノリスの洗脳を逃れて(別のモノリスに操られてはいるが)本来の人格を取り戻したというのは、彼の正当な権利を取り戻したにすぎず、その結果彼は凶悪な人間に戻った。

多くの人にとってそれが不利益な事であり、
また世の中の大多数の人間にとっては、蘇った彼の人格が成しえることが不正義であるという事に間違いはないが、
この物語が提示してるテーマとその誠実さの前では、視聴者はそれを単純に悲劇だと言いきれない。

それはたぶん、世界がもともと美しさと同時に、(冴木が言うように)残酷で悲しい部分をもっていて、実はそれこそがあるべき自然な姿なのだと。
そういった事をこのドラマでは隠さずにあえて強調していて、その文脈の中には、真実に光を当てるかのようなある種の清浄感のようなものがあるからなのだろうね。



あと「王妃の放射線障害」や「プロメテウスの火」というキーワードに象徴されるように、
この番組には反核のメッセージと受け取れる痕跡がところどころにあって、それらの要素が小出しにされ始めてからは、どうしてもそのような目線で見てしまう。

東日本大震災とそれに伴う福島第一原発の事故以来、
反原発活動に傾倒してる岩井俊二にしては、この時期にドラマに初挑戦しての「これ」というのは、むしろずいぶんおとなしい表現だなという印象を持ってたのだけど、
この数話かけて、異世界(D-8世界)の人達の台詞や、こちら側のD-12世界を初めて見た時のリアクションを数珠繋ぎにしてくのを見てるうち、予想外に重い表現だなと思うようになった。

異世界から来た連中は皆一様に、こちらの世界の空の色を見て驚く。
彼らの、その感嘆する異様な姿を見てるだけでも、なにかしら胸に迫ってくるものがある。
とくに先週の第8話で、命がけで転送してきた少年が、何気ない空を見てその美しさに感動するシーンが印象的だった。

夕暮れの空の下で息絶えた彼が最後に思ったのは、在りし日の故郷への郷愁だろうか。
それとも彼にとっては新しい世界の空に映し出される希望だったろうか。

今週の王女の帰宅シーンでも、下校時に降り注ぐ憂鬱なだけのただの雨を「綺麗な雨」だと喜んで濡れて帰る姿が描かれ、このように何気ないことに感動する滑稽な異世界人達を通して、彼らが失ったものと、そして我々がまだ失っていないものの大きさを強調しようとしてるのでしょうね。



まあそもそも、このドラマの中で描かれている日常世界=「D-12世界」は、我々視聴者の住む世界と同一ではない可能性が以前のある描写から考えて、かなり濃厚なわけですが。

だとすれば、「超」の二つくらいつく救いのないバッドエンドも可能だと思ってしまう。
来週からはバッド展開突入らしいのだけど、「D-12世界」が別の世界なのだったら、
その方がテーマが際立つような気もするし。だったら嫌だなあ。

むしろD-12が滅んだほうが、我々蚊帳の外にいる視聴者は身につまされるだろうなあと。

2014.03.08 Comment:0 | TrackBack:0
Secret

TrackBackURL
→http://sttng.blog67.fc2.com/tb.php/142-c80d5c40
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。