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 (イブニングKC・全五巻) 

全五巻を一気読みしました。

流した涙の総量は100mlはいくんじゃないかというくらいの勢いで、全5巻を通してページを繰るごとに滝のように泣いてました。
最後まで読むとなんとなく展開や結末がわかってしまうように書いてますので。未読の方は注意してください。

実の兄妹の道ならぬ恋を描いた作品ですが、ここまで真正面から描くとは。
大変な傑作だと思います。
そのためか、いま疲れて読後感が重いです。

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ネットで感想を漁ると、読む人によってだいぶ感想は違うようです。
もしかしたらそれは、この漫画が骨子に優れた文学作品としての機能をもっているからではないかと思いました。
いわゆる「文学」作品は読者との対話の結果、各々の読者ごとに違ったメッセージを投げかけるといいます。読者個人の経験や人生観が作品の読み方に反映されるからでしょう。

本来、自分は兄のほうに視点を置くべきなのでしょうが、
始終ヒロイン七夏のほうの目線で読んでいました。

頭の中が(あくまでこの作者の考える)女子高生と大してかわらぬ思考パターンなのかと思うちょっと恥ずかしいのですが、
ヒロイン七夏(なのか)の、道ならぬ恋の軌跡として読んだのが”僕の『恋風』”でした。

一方、兄の苦しみはけっこう突き放した感じで読んでいたかも知れません。
社会人である兄の、最終的に選択した決断は、夢見る少女である七夏と比べても非常に重いものでしたが、七夏のまっすぐな情熱にひっぱられた感があると思います。
七夏の視点があってこそ思うのですが。
この作品は非常に美しいです。

この文章書いていて気づきましたが、
僕は七夏と同じ破滅型の性格のようで、そのため同調してしまうようです。

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以下ネタバレ含んでいきます。まずは本屋さんに走りましょう。

七夏のくるくる変わる表情がどれも可愛らしく良かったですが。
最終回の七夏の凛とした表情は特に素晴らしいです。

作者は、ロミオとジュリエットのような、許されぬがゆえに燃え上がる悲恋を、ただ悲劇の醍醐味をメインとして描くのではなく。
そこから這い上がる人間のたくましさ。
運命を、道理を、神の定めた摂理をも超越した人間の力強さを描こうとしたのではないかと思うのです。

七夏のこれまでに辿ってきた道、そして作者が非常に丁寧に描いてきた彼女の魂の軌跡のすべてが最終回、ベランダで微笑むあの顔に集約されているように思います。
だから、あの微笑が七夏のベストカットです(ラストショットの桜吹雪のなかの笑顔のほうではありません)。
こういった七夏の視点があればこそ、この作品は美しいのです。

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ひとりの幼い少女が、ひとりの強い意思を持った女性になっていく過程が感動的です。

最初は、ひたすら七夏の健気さに泣かされてきた僕も、いつのまにか決意をもった女の意志の力に感涙していました。
もう前半で涙腺はぶっ壊れてますから、とにかくむやみにダダ泣きしてただけかもしれないけどw


作中、かなわぬ恋の対比として描かれる、
同級の宮内君のエピソードが好きです。

宮内君のしのぶ恋は、それはそれで美しいものだと思いますが、
七夏からすれば、この世の不幸を一身に背負ったような彼のあきらめは。
とても卑怯に映ったのではないでしょうか。


同じつらい恋を歩む同胞としての「優しさ」よりも、
ここでは七夏の意志の強さを強調するかのように「厳しさ」が貫かれていたように思います。

「私は違う」

そう心の中で彼女はいったかどうかは知りませんが。
この似て非なる境遇である宮内君のエピソードが
(だからこそ)七夏の背中を押したように思います。

直後、親友の双葉が目撃する七夏の妖艶な表情は、狂気一歩手前の危うさと同時に。最終回での、あのすがすがしい笑顔を予感させるかのような、決意の片鱗をすでに感じさせます。
これが七夏の二番目にいい顔です。

そして、その直後に双葉に弱音を見せるシーンとのギャップで、
読者の(主に僕の)涙腺も大幅に緩むわけです。
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宮内君には悪いけれど、この不幸勝負は七夏ちゃんの勝ちです。
結局彼は想いを消極的にあきらめた時点ですべての可能性を手放しました。
七夏にいわせれば、それはそれだけの想いでしかなかったといいたいかもしれません。
失う覚悟もなく、不幸を気取っている人には、結局なにも掴むことはできない。
想い人が婚約者と楽しげに会話する姿をさびしげに見守る彼に美しさがあるといえるでしょうか。
ここまで読んできた読者はこう思わねばならない。決して美しくはないのだと。

ただ、彼の「動かない」という選択が間違ってるとはいえない。
それだけです。
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この作品はリアルな描写を重ねてはいますが、あくまでファンタジーとしての側面が否定できないと思います。
実際の近親姦に悩む人は、世には出ずともかなりの数がいるのでしょうけども、ここまで純粋な気持ちで突っ走しられたら、やはりひとつのファンタジー的な結末であると思うべきで、それはタブーを超えたところにある超越の美であり、人間の極限を超えたところにある意志の力を描いた美しさであり、そしてそれは、やはり現世と同じ壇上で語られるべき性格のものではないと思うからです。
これはファンタジーのもつ美しさに他なりません。

作者が現実の経験をつんだ大人の世界の住民ならば、
世間体の権化としての機能を持たされたキャラである、同僚の女性千鳥のセリフ、
「キモいよ」
「恋なんて自分の幻想相手に重ねてるだけでしょ」
「頭に血がのぼって周りが見えなくなってるだけ」

物事を相対化させるためにややキツい口調にはなってるけど、作者自身の本音もこっちにあるはずなのですが、それを超越した妄想で美しい夢を見せてくれてありがとうと言いたい。

そして、これらを踏まえたうえでやはり、作中のふたりにむかって
幸せになっておめでとうといいたいです。

道なき道を開拓し、力強く歩み始めたふたりに、
これからも変わらぬ幸のあることを祈らずにはいられません。


ラストで七夏は「かなわぬゆめ」であったはずの
幼い頃の夢のひとつである美容師への道を歩み始めますが、
これは彼女が決して人生を捨てていない証拠であると同時に、
さらなる怒涛の展開を予想させます。
しかしそれはまた別の物語なのでしょう。


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(おまけ)
作者の性別が気になるのですが、ネットで調べてもよくわかりませんでした。
女性だという説もあるようなのですが、結局のところ真偽はわからない。
でも、僕も作者は女性だと思います。

連載開始当初の頃の絵はこだわりありそうにフリーハンドで緻密に描き込まれた背景も含め「男絵」「オタク絵」に思えます。
イブニングというサラリーマン向け雑誌掲載であり、やはり人気商売ですから、妹萌えという商品としての側面があったかもしれません。

そう思うと、1巻で下着の匂いを嗅いでハアハアいってるところも
いかにも女性作家が男性の担当編集者のアドバイスをとりいれつつ、「男ってこんなもんでしょう?」といってるような気がしてくるし、

失恋で生理がとまって、生理が再開したのが兄への道ならぬ恋への予兆となっているという憎い演出も男には描けないと思う。

それならばもうひとりの主人公であるはずの兄、耕四郎に近い立場である僕が、彼にリアリティを感じないというか今一歩共感できないのも納得いくのですが、これで作者が男性だったら、それはそれでマジで尊敬します。
あれだけリアルに七夏の心理描写をできる男は、ただものではないはず。

絵もかなり「男好き」するように描かれていましたし、そのこともあってこの時点では作者は男性だと思って読んでいたのですが・・・特に後半、半年の別居のあと成長した七夏の描写では
こういったロリロリした妹萌えがかなぐり捨てられ、はっきりとした少女漫画タッチに絵柄が変わったのが印象的。

それと呼応するようにストーリー面でも、衣着せぬ女性視点で描くようになったと思うのです。作者自身の筆がノッって、当初と違った予定のこういう絵柄や展開になったのだと想像してるのですが。だとしたらいい感じに暴走してくれたと思います。
どちらしにしろ作者は一人っ子じゃないでしょうか。
少なくとも異性の兄弟がいたらこれ描けないと思う。

僕はきょうだいがいませんが、はじめて得した気分です。
妹のいる兄や、兄のいる妹はこの傑作をのめりこんでは読めないかもしれない。
いやあ、該当する方は人生ひとつ損しましたね(自慢)。
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2006.05.04 Comment:2 | TrackBack:0
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